地域全体が、学びのフィールドに。AI×地域探究プログラムを開催しました。

大野が抱える"リアルな課題"に
大野の子ども・若者が本気で挑む4日間

地域の大人と、子ども・若者が、本気で一つのことを考える。
ありそうで、実はなかなか無い機会なのかもしれません。

今回の4日間では、実際に大野市内で活動する事業者が抱えている課題に、大野出身の小学6年生と大学3年生が向き合いました。
事業者に話を聞き、自分で調べ、自分の頭で考える。
ときにはAIの力も借りながら考えを広げ、また地域の大人から意見をもらい、考え直す。

最終日には、地域で仕事をする人、市役所職員、中学生、地域の方など、世代も立場も違う人たちの前で、自分なりの提案を届けました。

4日間を終えて強く感じたのは、参加者が何を学んだかだけではありません。
本気で地域と向き合っている大人と、本気で考える子ども・若者が出会い、一緒に一つの問いを考える。
その関係そのものに、大きな価値がある。

子ども・若者にとっては、教科書の外にある社会と出会う機会になる。
地域の大人にとっても、次の世代の考えに触れ、自分たちの仕事や地域を違う角度から見つめ直す機会になる。
そして、その間にある「地域の本物の課題」が、学びの題材になる。

今回の実践を通して、そんな「地域全体を学びのフィールドにする」可能性が見えてきました。

では実際に、どんな4日間だったのか。
今回の取り組みと、そこから見えてきたことを振り返ります。



2026年8月3日〜6日の4日間、
ここのわでは「AI×地域探究プログラム」を開催しました。

今回参加してくれたのは、大野市出身の小学6年生と大学3年生の2名です。

地域で実際に活動する事業者の声をもとに設定した「本物の課題」に向き合い、地域の大人へのインタビューやAIも活用しながら、自分なりの提案をつくる4日間となりました。

当初は複数人でのチーム探究を予定していましたが、
参加人数が2名かつ、小学6年生と大学3年生という年齢差もあったため、それぞれでテーマに向き合う個人探究へ変更しました。

結果として、この変更が今回の大きな特徴の一つになりました。

地域のリアルな課題を、「その人が挑める問い」に変える

今回、参加者に最初から決められた課題をそのまま渡したわけではありません。

プログラム実施前に、地域で活動する事業者のみなさんへインタビューを行い、今感じている課題や、これから地域で考えていきたいことを伺いました。

その内容をもとに、参加者の年齢や経験、興味関心も踏まえながら、ここのわ側で3つの探究テーマを設定しました。

  • 「20年後も『大野で暮らしたい』と思える持続可能な仕組み作りをするには?」
  • 「伝統工芸の後継者不足を解消するには?」
  • 「商店街に子どもたちの遊び場をつくるには?」

どれも架空の課題ではなく、大野で実際に活動する大人たちの声から生まれた問いです。

ただ、本物の課題をそのまま渡せば探究になるわけではありません。

小学6年生と大学3年生では、これまでの経験も、考え方も、必要なサポートも違います。

だからこそ、「この参加者だからこそ、どの角度からなら本気で考えられるか」まで考え、テーマや進め方を設計しました。

同じ4日間でも、2人が歩んだ道のりはまったく違う

今回のプログラムでは、参加者に合わせて探究の進め方そのものを変えました。

用意するワークシートの種類や内容が違う。
最初に関わる地域の大人も違う。
どこまで自分の力で考えてもらうかも違う。
AIを導入するタイミングや、AIに担ってもらう役割も違う。

ただ、共通しているのは、
地域の本物の課題に向き合い、自分で考え、調べ、人に聞き、AIも使いながら、自分なりの提案をつくること。

そこへたどり着くまでの道筋は、一人ひとりに合わせました。

小学6年生には、まず自分の頭で考え、自分の手でインターネットを使って調べる時間をしっかりと取りました。
そのうえでAIを導入し、自分だけでは思いつかなかった視点を増やしたり、出てきたアイデアを整理したりするために活用しました。

一方、大学3年生には、目の前の課題に対する解決策を考えるだけではなく、
「そもそも本当の課題はどこにあるのか」「事業者が感じている課題と、自分が見ている課題にズレはないか」
といったところまで掘り下げて考えてもらいました。

当初想定していたチーム探究とは違う形になりましたが、
参加者が2名だったからこそ、一人ひとりに合わせてここまで細かく設計を変えることができました。

これは今回やってみたからこそ見えてきた、このプログラムの可能性の一つでもあります。

4日間のおおまかな流れ

Day1は、テーマとゴールの共有からスタート。
事前インタビューの内容を共有し、情報収集を行ったうえで、実際に事業者へインタビュー。
そこで聞いた話をもとに、それぞれが探究していく方向性を決めました。

Day2は、まずDay1までの内容を整理し、自分の力で思考を深める時間を取りました。
そのあとにAIを導入し、アイデアを広げる「拡散」と、情報や考えを整理する「収束」の両方に活用しました。

Day3は、それまでに集めた情報や考えを整理し、発表準備へ。

Day4は、最終発表の準備とリハーサルを行い、地域の大人たちの前で4日間の探究結果を発表しました。
最後には、いただいた意見も踏まえながら4日間全体を振り返りました。

4日間で見えた「考え続ける力」

今回、特に印象に残ったのが、参加者が簡単に答えを出さず、考え続けるようになっていったことです。

小学6年生の参加者は、
自分の頭で考える
→ 自分の手でネットにある情報を調べる
→ AIの力を借りる

というプロセスを繰り返しました。

最初からAIに答えを求めるのではなく、自分なりの考えを持ったうえでAIを使うことで、もともと持っていた発想がさらに広がっていく様子が見られました。

また、タブレットやPCなどのデジタル機器を日常的に使っている世代だからこそ、操作そのものに対する抵抗が少なく、AIを使い始めるまでの前段階に大きな時間をかける必要がなかったことも印象的でした。

一方で、「AIを何のために使うのか」「どの場面で使うと効果的なのか」といった本質的な活用については、まだこれからです。
指示の出し方や、AIに任せる部分と自分で考える部分の区分も含め、4日間の中で少しずつ経験していきました。

その過程で、「もう少し考えてみる」「違う方向からも見てみる」と、考えることそのものへの粘り強さが増していったように感じます。

私たちは、これを「思考体力」と捉えています。

大学生にも起きていた変化

大学3年生の参加者にも、大きな変化がありました。

課題の表面だけを見るのではなく、「そもそも、この課題の本質は何なのか」と問い直しながら考える姿が見られました。

事業者など当事者の視点と、自分自身の視点。
その両方を行き来しながら考えることで、一方向からではなく、多角的に物事を捉える機会にもなりました。

さらに、「人間が考えるべきことは何か」「AIに任せられることは何か」を考えるきっかけにもなりました。
考える。問い直す。人の話を聞く。相手の立場から見る。そして、自分の考えを形にして伝える。

今回の4日間には、社会に出たあとにも必要になる力を実践する場面が、想像以上に多く含まれていました。

この企画は、地域のみなさんと一緒につくりました

今回のプログラムは、ここのわだけで完結するものではありませんでした。

企画・運営は、ここのわとカンケイ商店。

ここのわが教育プログラムの設計や参加者への伴走を担当し、
カンケイ商店代表の中村さんには、AIの専門家としてAI活用の部分を担当していただきました。

また、「どう考えるか」という思考のプロセスについては、
ここのわと中村さん各々の専門性を生かしながら、異なる角度から参加者に伴走しました。


そして、地域課題を考えるうえで協力いただいたのは、大野市内の地域事業者の皆様です。
今回は、伝統工芸分野、商店街分野、大野の未来分野の3つを取り上げました。

実施前からインタビューに協力いただき、そこから見えてきた地域の課題をもとに、今回の探究テーマを設計しました。

プログラム当日も、参加者自身が改めて事業者へインタビューを行い、「外から想像した課題」ではなく、実際にその仕事や地域に関わっている人の声を聞いたうえで考えを深めました。

最終日の発表では、協力事業者、大野市役所で地域創生や子ども支援に携わる職員の方々、編集者の方(商工会議所青年部にも所属)、地域の方が足を運んでくださり、世代も立場が違う方から、参加者の提案に対して率直な意見やフィードバックをいただきました。

当日参加できなかった協力事業者のみなさんからも、探究結果を共有し、最終的なフィードバックをいただきます。

また、本企画は大野市教育委員会の後援をいただいて実施しました。

こうして振り返ると、今回の学びをつくっていたのはAIや教材だけではありません。
地域に本当に課題を持っている人がいて、その課題を受け取る子ども・若者がいて、その間をつなぐ大人がいる。

その関係そのものが、このプログラムの大きな価値だったように思います。

地域の大人からも、さまざまな声をいただきました

関わってくださった方々からは、

「地域の課題を、その地域出身の子が考える機会があることが素晴らしい」
「地域の大人と、地域の子ども・若者が本当の意味で関われる機会になっている」
「表面的ではなく、本質を見たテーマ設定がよかった」

といった声をいただきました。

さらに、今回出てきた提案や探究結果をここで終わらせず、さらに深めていけば、実際に地域の中で価値を生み、お金を生み出すところまで発展できるのではないか、という意見もありました。

「探究」という言葉だけでは、収まらなかった

4日間を終えて、私自身の中で一番大きかったのは、
「これは、ただの探究学習ではないのかもしれない」という気づきでした。

小学生にとっては、自由研究のようにもなる。
中高生にとっては、地域や自分の将来を考える探究にもなる。
大学生にとっては、社会に出る前の実践やインターンのような経験にもなる。

参加する人によって、得るものも、必要なプロセスも違います。

けれど、共通しているのは、
社会の中にある正解のない問いに、自分なりに向き合ってみること。

地域の大人と出会い、話を聞く。
自分で調べる。
自分で考える。
AIにも力を借りる。
人から意見をもらう。
そして、また考え直す。

この繰り返しそのものが、これから社会に出ていく子ども・若者にとって、大切な経験になるのではないかと感じています。

この4日間を、次につなげていきます

今回の参加者は2名でした。
そのため、この一度の実践だけで「このプログラムにはこういう教育効果がある」と結論づけることはできません。

一方で、2人だからこそ一人ひとりの思考の変化を間近で見ることができ、年齢やその人の現在地に合わせて、探究そのものを個別化する可能性も見えてきました。

そして何より、
本気で地域と向き合っている大人と、本気で考えようとする子ども・若者が出会えること。

そこに、この取り組みの大きな価値があると感じています。

ここのわでは、今回の経験を検証し、改善しながら、今後もこの取り組みを継続していきます。
一般募集による開催だけではなく、学校・行政・企業・地域事業者のみなさんとも連携しながら、地域そのものを学びのフィールドにする仕組みへと育てていきたいです。

また、この取り組みを一緒につくってくださる事業者の方、子ども・若者と関わってくださる地域の方、活動を支えてくださる企業・団体のみなさんとの連携も、少しずつ広げていきたいと思っています。



子ども・若者にとっては、社会と出会う機会に。
地域の大人にとっては、次の世代と出会い、自分たちの地域や仕事を改めて見つめる機会に。
そしていつか、そこで育った子どもや若者が、自分なりの形でまた地域や社会に関わっていく。

そんな循環を、この大野から少しずつ創っていきたいと思います。

4日間参加してくれた2人、そして本気で向き合ってくださった地域のみなさん、本当にありがとうございました。